FC東京のレビュー記事の最後で、「過去最高の監督はオシム監督だと思います」と書きました。
過去記事 → 【レビュー】FC東京 vs 名古屋グランパス Jリーグ第2節
そのオシム監督が、先日亡くなられました。
少し遅れましたが、心からご冥福をお祈りします。
ジェフを再建させたその手腕、ジェフで展開した素晴らしいサッカー。
日本代表も変えてくれると期待しましたが、体調不良で代表監督は交代せざるを得ませんでした。
当時のジェフは、高額な選手が多いチームではなく、高度に組織化されたチームでもなく、低迷していました。
そんなチームを一気にアグレッシブで見ていてワクワクする、勝てるチームに変えたオシム監督。
ユース育ちの阿部ら才能のある若手に、ハイレベルな戦術を植え付けて改革を実行しました。
戦術を試合中のプレーに落とし込む練習をいかに構築するか?
オシム監督の戦術は、「考えて走る」です。
まさに現代のポジショナルプレーの基本原則だと思います。
当然、1試合を通して走り切るスタミナ、どこへ走ればいいか判断できる状況判断能力、そして積極的なフリーランが必要です。
それらが噛み合って、魅力的な攻撃サッカーを展開しました。
指導者として難しいのは、戦術を選手に頭で理解してもらうこと。
さらに難しいのは、試合中に、戦術どおりの動きを選手が実行できるように落とし込むこと。
オシム監督は、考え抜かれたバリエーション豊富な練習を通して、選手が自然と「考えて走る」プレーを選択できるように育て上げました。
頭でわかっていても、実際には思い通りの行動ができない。そんなことは多いと思います。
スポーツでは特にそうですし、楽器の演奏や、ゲーム、仕事、なんでもそうだと思います。
特に最近のサッカーは、個人としても、チームとしても戦術が高度になっています。状況の判断・プレーの選択が難しく、頭も酷使する非常に複雑なスポーツです。
試合中にゆっくり考えながらプレーしていては、とてもついていけません。
試合中は常に頭を働かせ、状況を認識したら、自然と最適なプレーを選択できるように、体に覚え込ませる練習が必要です。
それが非常に上手かったのが、オシム監督です。
名古屋にも必要な組織力の構築。効果的な練習で基礎的な動きから
昨年までの引いて守るゾーンディフェンスから、プレッシングサッカー、攻撃的なサッカーへの転換を図る、名古屋グランパスも、今は頭ではわかっていても体が瞬時に反応しない状態だと思います。
特に昨年までの引いて守る、下がって守るクセがついているため、守備でも攻撃でも積極的に前に出る動きに変えるには相当の時間と練習が必要です。
後ろに人数を割く戦い方に慣れたせいで、選手に前に上る意識も少なく、攻撃への切り替えの動きも体に染み付いていません。
これをいきなり攻撃的なプレースタイルに変えることはとてつもなく難易度が高い状態でした。時間がかかりすぎます。
これが、私が開幕前から攻撃面の改善は一旦後回しにして、まずはプレス守備の構築に専念した方がいいと書き続けてきた理由です。
いきなり攻撃的なサッカーに変えるには前提条件が悪すぎました。
プレス守備の組織構築は攻撃の構築と比べ、以下の点のメリットがあると思います。
- ボールを扱う必要が少ないため攻撃の戦術構築より短時間で戦術浸透できる
- 無失点に抑えることができれば悪くても引き分けに持ち込めるため、勝ち点を計算しやすい
- プレス戦術の場合は、高い位置でボールを奪えれば得点チャンスも作れる
守備専従で、もともと組織の戦術レベルが低かった名古屋です。まずは早期にプレス戦術を浸透させ、小さな勝ち点を積み上げながら攻撃面の改革に着手するのが最も理にかなったチームづくりだと考えていました。
しかし、川崎戦の結果速報の最後で書いたように、長谷川監督は守備よりも先に攻撃の改善に重点を置いてしまいました。それにより、チーム力の向上・勝ち点の積み上げが10試合ほど遅れてしまった印象です。
川崎戦結果速報 → 結果速報 川崎フロンターレ vs 名古屋グランパス (Jリーグ第4節)
この記事を書いたとき、私が抱いた懸念。もしかしたら長谷川監督が攻撃から構築することを選択せざるを得なかった原因が何かあったのでは、と。
それは昨年の引いて守る守備から、前からプレスをかける守備に変えることが、予想を遥かに上回る難しさだったのでは、ということです。
真相はわかりませんが。そうであったのだとすれば、長谷川監督にも多少同情の余地はあると思います。
とはいえ、その状況で守備面を後回しにして、攻撃面の組織構築に重点を置けば、チームの組織全てが空中分解する可能性は予想できた思うのですが。。
とはいえ、現状はチーム改革が明らかに遅れています。
ここからは方向性を間違えずにレベルアップを期待しています。
方向性さえ間違わなければ、本当に強いチームになり、勝ち点も自然と積み上がります。
ただ、この先も方向性を間違えそうな予感は若干漂っているので、戦術・戦略構築に長け、監督と意見交換もできるコーチの追加招集は、検討する必要があると思います。
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