総評:ブラジル戦で見せた成長と、チュニジア戦で見せた未熟さ
ワールドカップへ向け、キリンカップを含めた4試合を行いましたが、最後のチュニジア戦で惨敗を喫した日本代表。
何が良くて何が悪かったのか?いろいろ思うところはあります。
今回は、特にブラジル戦とチュニジア戦について詳しく書こうと思います。
ブラジル戦:日本の成長を感じさせた試合
世間的には守備に重点を置きすぎて、批判されることも多いブラジル戦。
しかし、私個人としては、最も日本代表の成長を感じた試合でした。
理由は、圧されながらも、現実的に強豪ブラジルに対して無失点に持ち込める可能性を感じたからでした。
もちろん、ネイマールやヴィニシウスらの圧倒的な個人技・連携に後手を踏むこともありましたが、人数をかけて連動して守り、ギリギリで守備組織の崩壊を防いでいました。
得点できない焦りをブラジルから感じました。
「日本の力を試すために攻める」はもう時代遅れ
「日本の力を試すために攻める」とよく言われますが、今の代表にはそぐわない表現だと思います。
その理由は2点。
1つ目は、今の日本代表の強みが守備力である点。
2つ目は、守備的に戦えば、現実的に日本代表が世界の強豪国と拮抗した戦いができるようになった点です。
以前の本田や香川がいたころの日本代表は、全体の守備力は弱いが攻撃力の高い選手が存在したため、攻撃に活路を見出す戦い方が適していました。守備はある程度割り引いて考える必要がありました。
しかし、今の代表は、チーム全体の連動した守備が日本の生命線であり、強みです。
ほぼ全ポジションの選手が海外で経験を積んでいるので、国際試合でのインテンシティに耐えられるチームに成長したと感じます。
昔の日本代表のように、中盤でキープもできず、相手に無駄にボールを取られることも減りました。
強豪国相手に、無失点で守りきり、少ないチャンスで1点取って勝つ、そこを目指せるチームになってきたと感じています。
なので、ある程度本気で点を取りに来たブラジル相手に1失点で抑えたこと、ブラジルの攻撃相手に守備組織を維持しきったことは評価できると感じました。
チュニジア戦:相手の力を見誤った試合。格下仕様の選手起用で完敗
この試合は、選手を落としてコンディションも悪かった、パラグアイやガーナと同様の布陣で戦ってしまったことが最大の敗因です。
格下と見誤り、親善試合仕様のフォーメーションで戦ったため、ワールドカップレベルのチュニジアに完敗してしまいました。
少なくとも田中はスタメンだと予想していましたが、鎌田と原口が並んで中盤のバランスが攻撃に傾きすぎました。
インテンシティを高めて攻勢に出た前半、しかし得点できず
いつもどおり、日本代表は前半からインテンシティを高めて積極的にプレスをかけて戦います。
グランパスも似た戦い方をしています。
なので、グランパス同様、前半に得点ができれば勝ちパターン、得点が奪えないとスタミナ面で不安になり、負ける可能性が高まります。
前半の決定機、特に攻撃特化の鎌田が外してしまった時点で、ゲームプランは崩れ、敗戦やむなしになったと感じました。
全選手の運動量を維持した前半、鎌田と原口の併用で前がかりになった中盤
前半は、トップの浅野の守備力と、全体の運動量でやや優勢に試合を進めました。
気になったのは、鎌田と原口の併用で中盤がどうしても前がかりになった点です。
ビルドアップの負担が遠藤に大きくかかっていました。
さらにチュニジアが中盤のつぶしを狙っていたこともあり、疲れの見えた後半、遠藤がボールを奪われるシーンが目立ってしまいました。
後半は、田中が入って遠藤のビルドアップの負担はかなり軽減されました。それでも圧をかけるチュニジアに、運動量の落ちた日本は中盤でボールを奪われる機会が増えました。
田中、守田は、鎌田・原口よりもより低いポジションからの適切なサポート・ビルドアップができる印象です。
守田の守備力・インテンシティ・運動量は鎌田よりも明らかに上です。
中盤の3枚に攻撃的な選手を配置するのは、強豪相手には今の日本代表では難しいと感じます。
後半:さらに攻撃的な布陣に変更。3失点で敗戦へ
後半開始から、原口に代えて田中。これで遠藤の負担が軽くなった印象です。
しかし、55分に吉田の判断ミスからファウル、PKから失点です。
そして、60分に、浅野から古橋に交代。鎌田を三笘と交代です。古橋は得点特化の選手なので、前線の守備力が低下しました。鎌田から三笘はともに攻撃特化選手なので守備のプラスマイナスはありません。
失点し、得点が必要だっただけに仕方ない面もありました。
さらに、71分に、伊東・南野に代えて、堂安と久保です。スタミナ面の問題もありましたが、明らかに攻撃だけに重点をおいた布陣となりました。
この時点で、1点取るために2~3失点する可能性を受け入れた布陣です。アジア最終予選の序盤で見た戦いが、繰り返されてしまいました。既視感があった方も多かったと思います。
多くの攻撃的な選手を投入しましたが、得手は奪えませんでした。
そして、76分にまたもミスから2失点目です。
ロスタイムにも追加点を許して、完敗となりました。
ワールドカップへ向け、選手を試す場としての成果
この試合、最大の焦点は鎌田がワールドカップ本戦で使えるのかどうかだったのかもしれません。
結果、攻撃面ではある程度の印象を残しましたが、守備面やインテンシティのマイナスは消えず、です。
強豪との試合でインサイドハーフで使うには、怖さが残ります。あくまで攻めるしかない時の切り札、更に中盤で使う場合は失点の可能性と引き換えの選手だと感じました。
久保・堂安や、伊藤・板倉・山根なども起用されました。板倉は通用しそうですし、伊藤のフィードもレベルが高かったです。ブラジル戦で健闘した中山もある程度目処が立ったと思います。
一方、鎌田や久保・堂安の攻撃陣は決定的な仕事ができず、守備力の低さもあり物足りなさが残りました。
長友は高い位置を取りすぎな印象でした。守備組織の維持を第一にプレーしてほしいです。攻撃的な選手が出すぎた状態でした。
目標ベスト8。では、日本代表選手は何人が4大リーグのレギュラー?
日本代表の目標は、ワールドカップベスト8です。
では、冷静に考えて日本代表選手の何人が、4大リーグ(イギリス・スペイン・ドイツ・イタリア)のレギュラーでしょうか?
FIFAランク10位前後の国と比べて、選手レベルは圧倒的に劣っています。
それでも組織力を高めて勝利を目指して戦います。
個の力で劣っているので、組織で戦うしかありません。
森保監督:正しく責任は監督に
チュニジアの力量を見誤り、さらに試合中に修正もできませんでした。
また、攻撃が行き当たりばったりという話も出ているようです。
私が最も気になったのは、古橋投入後の攻撃です。
GKとDFの間で勝負できるトップが入ったのに、クロスはほとんどそこを狙っていませんでした。
最終的に誰に得点を取らせるのか?得点ができる古橋をトップに投入したのなら、古橋が最も得意なシチュエーションを作ることを第一に考えるべきです。
監督からの指示はなかったのでしょうか?
三笘は自分が勝負して勝とうとする選手です。しかし、あの試合で必要だったのは、三笘がサイドで勝つことより、古橋が欲しいタイミングのクロスだったと思います。
全選手にGKとDFの間を第一目標にさせなかったのはなぜか?
課題が出尽くしたチュニジア戦を糧に本番ではいい試合を!
いろいろ書きましたが、多くの課題が見つかり、弱いチームに下手に大勝するより価値の高い試合だったと思います。
中盤でプレスをかけ、DFのミスを誘うというチュニジア監督の指示は、日本の弱点を明らかにしてくれました。本戦に向け、とても貴重な教訓を得られたと思います。
グランパスの記事でもよく書きますが、無理なシチュエーションではつなぐことより、クリアすることが大切です。
ビルドアップでは、つなげるかどうか判断する能力、難しい場合は正しくクリアする能力は大切です。ボールを繋ぐことだけに固執してしまって状況判断を見誤れば、相手にボールを取られてカウンターを受けるだけです。
改善点が見つかったという意味で、いい試合だったと思います。
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