久保建英 前半で交代 ベティス vs マジョルカ

久保建英

現在、私が日本最高の才能を持っていると目している選手、久保建英。そして、今やっているプレーに関して、私が最も疑問を持ってしまう選手でもある、久保建英。バルサで育ってしまったからなのか、あるいは大切な時期に日本に帰らなければならなかったからなのか。

真相は藪の中ですが、今回こそはやるべきプレーをして才能を十分に発揮してくれるのでは?と期待して試合を見ました。が、やはり不十分でした。今日に関しては相手も強く、あまり多くは期待できない試合ではありましたが。

マジョルカの立ち位置

マジョルカは、リーガ・エスパニョーラの降格圏を逃れることが目標となっている、リーガの中では弱小の部類に入るチームです。したがって、レアルやバルサに比べると選手層は圧倒的に落ちるチームです。強くて速くて上手い選手が集まっているチームではなく、強くて、かつスペイン人なのでまあまあボール扱いが上手い、そんな選手が中心のチームです。スターの華麗なプレーではなく、選手全員でがんばる、労働者プレーヤーが精一杯ファイトしてなんとか勝点を奪いに行くのがマジョルカです。

久保の立ち位置

そんなチームの中で、久保の立ち位置は?

守備やインテンシティ、デュエルでは、当然チームの他のメンバーより明らかにレベルが落ちます。

それを補って余りあるものを、チームは求めています。それはつまり、得点であり、アシストであり、攻撃面で違いを作り続けることです。

では、求められる結果をここまで出せているのか?というと不十分と言わざるを得ません。

数字だけを見てみても、これまでのリーグ戦で、15試合出場、得点1、アシスト0。チームも16位と、まだ安全圏とは言えない順位です。

ボールを持った局面での技術やセンスは相当に高いのですが、ではその高い能力を発揮できるプレーを試合の中で選択できているかというと、これが残念なことにあまりできていないのです。なので、得点も少ないし、チームの順位も上がってこない。

ここ最近の試合を見続けてきて、さすがにある考えが頭に浮かんでしまいました。もしかしてだけど、もしかしてだけど、久保ってサッカーIQ低いんじゃないの?

いやいや、さすがにそれは無いと思いますので、冗談はさておき、私の推測はバルサ時代の理想のプレーを追求しすぎているからか、あるいは、今の段階で、右サイドを1人で崩すことができないようでは、これから先リーガで勝負していけない、という考えに囚われているのではないか?というところです。

活躍できない原因は?

サッカーは多面的で、相互に依存する因子の多いスポーツなので、これが原因!というものを挙げるのは難しいのですが、私が推測している最も大きな要因は、以下の点です。

縦に速い攻撃をイメージできない、体現できない(あるいはやりたくないのかもしれない)。

マジョルカは、攻撃にかかるとき(ビルドアップ時は除きます)はほぼ全選手が縦に速い攻撃を志向します(パスをじっくりつないで相手を崩そうと考えているのは、おそらく久保とイガンインくらいです)。そして一方、久保はどんな時も、どんな時も遅攻を志向しています。ダイレクトで叩かないとヤバい場面以外は、常にボールを足元に置き、自分がボールを持った状態からプレーをスタートさせます。恐るべきバルサDNAです。

この、久保と周囲の選手の攻撃イメージの乖離が、久保がマジョルカで輝けない一番の原因と考えます。

とはいえ、常に速攻ばかりしないといけないわけではないですし、あえてボールを持って時間を作るプレーが必要になる場合もあります。でもそれは、裏に意図がある場合なのです。

速いプレーか、遅いプレーか、プレーの判断基準は?

ここで、速い遅いの二元論だけでプレーを語ると本質からずれてしまいます。

最も大切なのは、どのプレーが最も得点に近づくのか?これが全てです。

味方3人がゴール前にいいタイミングで走り込んでいる。そのタイミングで自分にボールが来たら、ダイレクトでゴール前にクロスを入れれば得点の可能性は高まります。ここでボールをキープして時間を使ってしまったら、味方とタイミングが合わないし、下手するとオフサイドに引っかかってしまいます。

逆に、あと2~3秒経てば、味方3人がゴール前に走り込める状態であれば、一旦ボールをキープして2~3秒時間を使ってからクロスを上げた方が、ダイレクトでクロスを入れるより、明らかに得点の可能性が高まります。

速いプレーか、ボールを持って時間を使うプレーか、どちらが良いかは、その瞬間瞬間の味方、敵、ボールの位置などによって、常に変化します。

サッカーIQが高い、賢いプレーヤー、周囲が見えていて、状況判断の良いプレーヤーはその時々で最も得点につながるプレーを選択できるから、良いプレーをできるのです。

つまりボールを受ける前に、キープするのかダイレクトでパスをするのかを判断できていることが大切で、もっと言えば、攻撃のスピードを落とさないように前に走り込みながらボールをもらうのか、あるいはその場で止まって足元にもらった方が良いのか、ここまで判断・イメージできていれば、得点につながるプレーにたどり着く可能性が高まります。

久保のプレーは?

以上を踏まえて、久保のプレーを見てみると、基本的に常に後ろに下がって、ボールを足元にもらいたがります。ほぼ常にです。

速く攻めた方が良い場面はないのでしょうか?

周りの味方はみんな速く攻めようとしていませんか?

DFの裏へ走ってほしそうにしていませんか?

前に走りながらボールを受けた方が良かったんじゃないですか?

そのプレー判断、間違っていませんか?

常に後ろに下がって足元でボールを受けようとする久保と、一方では、縦に速い攻撃を目指す味方プレーヤー。この両者の乖離によって、久保にボールが回ってこない状況が完成します

状況に合わせたプレーを!

ということで、久保がパスをつなぐサッカーを愛しているのはわかるのですが、試合では状況にあったプレーを選択してくれることを期待します。

今年取った1点は、パス回しからではなく、DFラインの裏を走り抜けた得点でしたよね?裏へ抜けるスピードと、走りながらボールを受けてゴールへ流し込むテクニックも持ってますよね?DFとの駆け引きがうまくなれば、相手DFにとってかなり怖い存在になると思いませんか?

パスサッカーを否定するわけではなく、速攻だけを肯定するわけではありません。その時々の状況にあったベストなプレーを選択してほしいのです。そして久保はそれができる選手だと思っています。

それ以外にも

それ以外にもこうした方がいいかなと感じている点は、

・縦に速く抜けてからの右足での高精度クロスを蹴れるようにする

これです。今の久保は、右サイド1対1の状況ではほぼ全て中へ入って左足でシュートかクロスしかありません。縦を抜かれる怖さがないのです。だから守っているDFは楽なはずです。

でもここで、もし縦に抜けて右足で精度の高いクロスを上げられたら、DFはどちらを守れば良いのか迷います。相手が迷えば、1対1を有利な状況で戦えます。

縦に抜けてからのクロスは、才能云々よりも、練習量が必要になるプレーです。反復練習をしないと、体が思ったように動いてくれないので、地道な練習が必要になります。個別に練習をできる時間があるのであれば、これを練習してもらいたいなと思います。

・ビルドアップへの参加

もう一点はここです。マジョルカはビルドアップに問題を抱えることが多いので、その場合はDFライン近くまで降りてビルドアップにも協力すると、チームとしては安定感が増すと思います。

組織的な守備のポジショニングには最近取り組んでいるように見えますし、フィジカル強化はスピードを落とさない範囲で継続していると思いますので、これらは時間の経過とともに良くなると思われます。

もし久保があと身長10cm、体重10kg大きければ、普通にデュエルで守備できていたので、ここまで攻撃に特別なものを要求されなくても済んだのですが。フィジカル全盛の時代に生まれた宿命です。

ベティス戦感想

さて、やっと試合の感想に入ります。前置きが長すぎでしたね。

実際の試合ではどうだったか?

ベティスが高いラインを敷いてきたので、今日は久保が自動的に裏へ走り込む場面は生まれました。ただ、これではたまたま今日がそういう状況だったからに過ぎません。どこを狙うべきかは、その時々の状況によって常に判断が求められます。また、無駄走りになることもありますが、自ら裏へ走りこむ動きも必要になると思います。

この日はベティスの前からのプレスが良いため、久保もなかなかボールを収めきれませんでした。本来であればこういう対戦相手のときこそ、しっかりボールキープ、最悪ファウルをもらって攻撃を継続させるプレーが、久保には求められます。

ムリキへのクロスは意識的に狙っていました。しかし、そのボールの質があまり良くないです。中村俊輔に近いレベルは必要と思われます(守備能力が低い分、攻撃では特別なレベルが求められます)。

ボールを受けたときも、あらかじめ攻撃のイメージを持っていた場面は少なかったように感じます。相変わらず、ボールを足元に収めてからどうするか考えるいつものプレーでした。いつものように右サイドでボールを持ってからのシュートも撃ちましたが、やはり可能性の低いシュートになっています。この形から、今年1点も取れていないことを、もう少し深く考えてみては?とも思います。

守備については久保なりにがんばっていて、良いところと悪いところが両方ありました。がんばったとはいえ、他の選手と比べるとレベルは下がるので、やはりその分、攻撃では決定的な仕事をしないと割が合わない選手になってしまいます。

必死さや、全力で走っている、ぶつかっていっているところが見えないのが、さらに残念なところです。特にオフザボールですね。攻撃で圧倒的な結果を出さない限り、守備面でチーム力を下げている実感がないのかもしれません。まだ20歳の若者ですからね。

以上です。

普通に守れる選手であれば、相手も強かったこともあり今日くらいの攻撃面の働きで良いのかもしれませんが、守備でマイナスな分、どうしても攻撃面では大きなプラスを要求されると思います。

思いつくままに、書き連ねましたが、才能があってもっともっと活躍できる選手だからと考えているからの文章です。精一杯やっていてこれ以上伸びしろがない選手に無理強いしているつもりはありません。久保のプレーを見ていると、いつももったいないな、と感じてしまいます。

体が出来上がるまでは、少しレベルの低いリーグへ移ったほうが、もしかしたら良いのかもしれません。

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